国際教育協力アーカイブス

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ライブラリについて

本事業の目的

本事業は、開発途上国における教育協力のため、大学、NGO等、我が国の教育関係者等が有する教育研究上の知識や経験を整理・蓄積するとともに、我が国の知見を踏まえた教育協力モデルの構築などを行うことにより、国内外の援助関係者が教育協力の現場で容易に活用可能かつ活用効果の早期発現が期待できる成果群を形成することを目的としています。

平成21年度に実施中の活動

  1. Ⅰ. 教育研究経験の活用

    【活動例:基礎教育・高等教育の対象分野】
    教育行財政・教員研修・学校保健教育・食農環境教育・女子教育・ライフスキル教育・教育改善・大学経営・教育研究管理 等

  2. Ⅱ. 教育研究経験の活用(ESD)

    【活動例:教員が現地で担当する主な活動分野】
    理科実験・図工・保健衛生・音楽・体育・学校行事・特別活動 等

  3. Ⅲ. 現職教員の支援
    • 活動支援教材、教員サポート、幼児教育、海外・日本の学校連携、食と健康、etc..
  4. Ⅴ. 知的支援ネットワークの形成
    • 農学知的支援ネットワーク形成による国際教育協力強化・推進のためのモデル構築

  5. Ⅵ. 関連情報の整備・管理
    • 「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点形成事業全体に係る成果品の収集と管理

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平成21年度実施課題

以下の各課題名は年度ごとに少し異なりますが、左のアイコン上に表示されている テーマは変わりません。

Ⅰ. 教育研究経験の活用

学校保健分野における教育協力の持続的な開発を目指す活動事業 課題名: 学校保健分野における教育協力の持続的な開発を目指す活動事業
実施機関: 大妻女子大学
概要:

ミャンマー
ミャンマーにおける事業開始の当初は(平成17年)、ミャンマー政府の許可を得ること自体が大きな関門であったが、3年間の学校保健改善事業を展開し、現在は順調に活動できる段階になってきた。幸いミャンマー政府は好意的に本事業を理解し、本省計画訓練局内に学校保健改善協力チームを設けるほか全国8,000人の教員養成大学学生に本事業のマニュアルを配布するなどしており、今年度以降の活動も保証している。そこで平成21年度は同政府教育省と協議し以下の計画を立案した。
1) 教員養成大学20校のうち10校(残る10大学は次年度以降)の学長を含む教員を対象として学校保健改善のためのWSを実施する。
2) このWSに(教育省の要請を受けて)2校の教育大学、1校の民族教育大学の学長、教員を加える。 (これで同国におけるすべての教育系大学をWSの対象とすることになる)
3) WSの後にこれらの教育系大学において学校保健改善プログラムに関する授業と指導を実施し、大学教員による学生への教育・指導を行う。
4) 一方、今まで3年間にモデル校として改善活動を実施してきた学校(68校)の活動を持続させるとともに、その活動状況をWSはじめ各地で報告してもらい、教育省の学校保健協力チームスタッフと協働して活動の定着と普及を図る。
5) これらモデル校は上記の教育系大学と協力して学校保健改善のためのチームを編成し、相互の情報、人材の交流を行って、これら地域の学校保健改善活動を推進するように計画する。この活動も本省の学校保健協力チームが支援する。
6) 5)のモデル事業に学生の実習訓練を取り入れる。
7) かねてよりミャンマー政府から依頼されている学校点検評価制度にこの事業が行っている学校保健の項目を組み入れるとともに、点検評価作業をモデル校で試験的に実施し、その結果をフィードバックさせて点検評価マニュアルを作成する。このために視学官、本省協力チームと協議を行う。
8) (ミャンマー政府の希望する)ミャンマー学校保健法の草案作成に助言、支援する。
タ イ
タイにおいては従来と同じく辺境の学校で活動を行う。ラオス、ミャンマーとの国境地域において現在も不法な越境が絶えず、これをタイ政府は容認して児童を受け入れている。ここでは特に数割の児童が国籍を持たず、衛生状況が劣悪で児童の健康状態も著しく悪い山地民の学校に対して、近隣のモデル校の教員によって学校保健改善チームを組織して、HQCによる改善活動を行う。そのためのWSを現地にて行う。
ネパール
事業を行うための準備として、現在作成中のネパール語版マニュアルを完成させる。

     
サブサハラアフリカにおける初等教育普及政策および行財政制度に関する比較分析 課題名: サブサハラアフリカにおける初等教育普及政策および行財政制度に関する比較分析
実施機関: 神戸大学
概要:   平成18年度から20年度の3年間、「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点形成事業「サブサハラアフリカにおける初等教育普及政策および行財政制度に関する比較分析」を実施した。本事業は、その3年間の活動を踏まえ、前事業において分析できなかった教育の質について、深く分析を行うものである。
  前事業においては、ケニア、ガーナ、マラウィ、ウガンダを事例国として、比較分析のフレームワークを形成し、教育行政や教育財政などの視点から現地調査を実施し、初等教育の無償化政策の現状を現地レベルで分析した上で、事例国の教育省関係者や援助機関の教育担当者を対象に現地でワークショップを開き、政策提言を行った。サハラ以南のアフリカの複数の国々では、初等教育の原則無償化を特徴とする政策(Universal Primary Education: UPE)が主流となっており、初等教育へのアクセスが向上しているが、その一方で、資格を有する教員や教室、教材の不足など貧しい教育環境により、生徒の学力が十分に身についていない、という問題点が途上国政府や援助機関の大きな政策課題となっている。 教育の質を向上することなしには、残存率や留年率などの教育の内部効率性を向上することもできない。更に、ミレニアム開発目標の指標で小学校5年間の就学が強調されているが、5年間の教育を受けても読み書きができない生徒が多くいることも問題視されている。
  本事業では、学校レベルに焦点を当てて、教育の質の問題について具体的な検証や分析をしている研究論文や政策報告書が少ない現状を踏まえ、教育の質の問題についての比較分析のフレームワークを形成し、過去3年間で事例国としたケニア、ガーナ、マラウィ、ウガンダを再度事例対象国として、アフリカの研究者と共に調査研究を遂行する。また、研究成果が事例国における教育政策に組み込まれるよう政策提言を行うために、これまで築き上げてきた現地でのネットワークを大いに活用し、調査実施前から教育省の政策提言者に対し本研究をブリーフィングする。前事業においてこれまで構築してきた現地でのネットワークを大いに活用して研究を遂行できることは大きな利点であり、本事業の特徴でもある。
     
産学連携による開発途上国の大学工学部の機能強化 課題名: 産学連携による開発途上国の大学工学部の機能強化
実施機関: 豊橋技術科学大学
概要:   本事業は、開発途上国の大学における工学系の活動に産学連携を組織的な活動として組み入れることにより、産業界の競争力向上と大学の教育研究機能の強化を図るため、スリランカ国モロツワ大学をモデル大学として、産学連携の開発モデルを構築することを目的としている。
  本事業は平成19年度に発足し、初年度には本学の産学連携の体制と取り組みに対する理解の促進とモデル大学において取り組むべき課題の整理がなされ、第2年度においてはモデル大学における産学連携のための企業ニーズと大学シーズの調査、同大学における体制整備、産学連携に係るガイドライン案の起草がなされてきた。
  これを受け、事業期間の最終年度となる平成21年度においては、産学連携の推進に際して求められる活動をモデル大学における経済的産業的文脈の中で明らかにするとともに、本学の経験や他のアジア諸国の現実にも照らし、モデル大学を越えてより幅広い開発途上諸国の諸大学において活用可能な産学連携推進のためのガイドラインを策定し、関係大学及び産業界の利用に供しようとするものである。
     
開発途上国における拠点大学を中心とした農産物加工産業振興モデルの構築とその普及 課題名: 開発途上国における拠点大学を中心とした農産物加工産業振興モデルの構築とその普及
実施機関: 名古屋大学
概要:   カンボジアを事例として、開発途上国における拠点大学を中心とした農産物加工産業振興モデルを構築するため、酒造農家のグループ化によって米焼酎の商品化に必要な品質管理、販路開発のための生産量の確保とそのための管理体制を築く。またこの取り組みを、カンボジアと同様の問題を抱える近隣諸国に普及させる基盤を整備するために、昨年度カンボジアにて実施したモデル構築のための一連のプロセスをラオス国立大学農学部にて試行し、カンボジアの事例と合わせて成果・教訓を他の東南アジア諸国に発信する。
1)事業背景
  カンボジアは、長い内戦の後にようやく自給を達成し、肉・野菜の需要増加による農業の多様化が始まる段階に達しつつある。近年、首都プノンペンでは、女性の社会進出や生活スタイルの都市化に伴い、手軽に利用でき、保存が効く加工品の消費量が増加する傾向がみられているが、自国での加工品産業が未発達であるため、殆どの加工品が隣国からの輸入品であり、今後は、市場指向型の農産物や加工品の生産に力を注ぐ必要がある。名古屋大学農学国際教育協力研究センター(農国センター)では、平成20年度科学研究費補助金による「カンボジアにおける市場ニーズにあった農産物加工産業振興による農村開発モデルの構築」に取り組み、カンボジアの農業生産の中心地であるタケオ州を対象地域として、加工品の中でも赤字世帯が大半を占める米焼酎と漬物の品質を向上させるための技術について研究を進めている。この取り組みをカンボジアにおける農産物加工産業の継続的発展につなげるためには、同国の農業大学が加工農家の実状を踏まえた調査・研究、技術の開発・改良、人材育成を通じて普及に携わっていくことが必要不可欠である。しかし、カンボジアにおける農業・農村開発の試みは、多くの開発途上国と同様に、NGOを中核として展開されており、農業の現場での調査・研究を通じて自国の農業に関する問題点を見出し、解決策を示していくべき農業大学は、その役割を果たせていない。
2)これまでの成果
  農国センターでは、平成20年度「国際協力イニシアティブ」事業により、カンボジアを始めとする開発途上国の農業大学に必要とされている、「現場での実践に基づいた教育・研究体制」を整備するための5つのプロセス:①農産物加工品の品質向上に向けた実践、②試作品の評価、③教育・研究へのフィードバック、④活動全体の評価、⑤教訓に基づいた活動計画の策定、を王立農業大学とともに実施することで、開発途上国の大学による農産物加工産業振興モデルの土台を築いた。これをモデルとして構築するためには、RUAを主体とした取り組みや実施体制の強化・整備を行うと同時に、商品化に向けて、昨年度作成した試作品と同等以上の品質の米焼酎を複数農家にて生産できるようになることが必須であることが明らかとなった。また、同様の問題を抱える近隣諸国に対する同モデルの普及を目指し、ラオスにおける農産物加工品を取り巻く現状・課題、農産物加工産業と農業大学の関係について現地調査を実施・分析した結果、ラオスにおいて同モデルの発信・普及に対するニーズや実施可能性が高いことが確認された。
3)今年度の事業
  平成20年度「国際協力イニシアティブ」事業にて築いたモデル構築のプロセスを整備・強化すると同時に、米焼酎の商品化に向けて、酒造農家のグループ化による品質管理、販路開発のための生産量の確保とそのための管理体制を築く。また、タイ農業協同組合省農地改革局(ALRO)と協力して、ラオス国立大学農学部を中心とした農産物加工産業振興に関する取り組みを開始し、カンボジアとラオスの両国における取り組みの成果・教訓を同様の問題を抱える東南アジア諸国に発信し、中でも特に深刻な状況にあるミャンマーへの普及基盤を整備する。
     
発展途上国の地域ニーズに対応した口腔保健システムの構築のための教育支援 課題名: 発展途上国の地域ニーズに対応した口腔保健システムの構築のための教育支援
実施機関: 日本大学歯学部
概要: 本事業の教育支援モデル一般に発展途上国での地域保健・医療における医師・歯科医師の不足や医療供給システムの遅れにみられる問題の所在は,現地の保健・医療施設,教育機関や地域コミュニティの機能だけでなく,医学・歯学教育自体に起因することが少なくない。そのため当事国では,保健・医療の核となる大学自体が自律的に教育研究機能を充実することにより,質の高い臨床医学が発展して,社会に有為な医療人が養成されることが望まれている。発展途上国の医療系大学では,医学教育面での国際水準を目標としたカリキュラムの充実や教材開発,さらには教育制度の在り方までの問題解決が求められている。また,海外から最新の医療技術の移転や導入が実施されても,当事国が制定した医学・歯学の教授要綱などの教育研究制度のもとで有効に活用されなければ,自律的に医療技術を開発する基盤構築は難しいとされている。このような現状から,日本側から医学教育支援を実施する方略のひとつとして,日本の医学教育カリキュラムを直接に提供するのではなく,当事国の医学教育の問題点を明確化して,問題解決方法を共同で検討する取り組みが考えられる。そこで日本の医療系大学・学部が発展途上国における医学・歯学教育制度の基盤形成を支援するモデル構築を目標として,日本大学歯学部・医学部はラオス人民民主共和国において唯一の医療系大学であるヘルス・サイエンス大学と「地域における保健医療・学校保健」を課題とする問題解決型教育プロジェクトを発足し, ①小学校児童の健康に対する調査活動, ②プライマリ・ヘルス・ケア, ③健康情報のデータ・ベース構築などの保健医療活動を実施している。事業活動を通じて,日本の医学教育・研究の方法論の検証や教材開発が行われることにより,当事国の医療系大学が自律的にカリキュラム,教育資源や学習方略の基盤を形成できるように支援されている。本年度では,本事業の活動成果を発展させ,当該大学において新設される修士課程の指導教官育成,教育方法・各種教材などを共同開発する。また事業終了後にも保健医療分野の修士課程の構築支援を継続する。
     
開発途上国の産業技術教育を支援するコアカリキュラム提供システムのモデル構築 課題名: 開発途上国の産業技術教育を支援するコアカリキュラム提供システムのモデル構築
実施機関: 愛知教育大学
概要:

前年度は,産業技術教育で最も要請の大きい「専門技術教育」の基礎となる,[産業技術基礎]のコアカリキュラムの編成とテキスト[産業技術基礎]を編修した。これは,技術教育と工業教育の基礎として有効であり,テキストの領域は,「製図」,「木材加工」,「金属加工」,「電気」,「機械」,「情報」,「技術倫理」,「安全衛生」の8領域とした。周知の通り,産業技術は知識面と技術面(技能面)の両者が必要である。前年度は前者の知識面であるテキスト[産業技術基礎]を作成したので,本年度は後者の技術面である[産業技術基礎]実習テキストのコアカリキュラム編成と,そのコンテンツの編修と評価票の作成を行う。また,これらの成果が開発途上国で有効であるかどうかの検証を,積極的に産業技術教育に取り組んでいるフィリピンのコロンボプラン・スタッフカレッジで,実習テキストのPR活動とワークショップを含めて行う。同時に,多くの国へのアンケート調査による検証を行う。そして,その検証の結果を初期のコアカリキュラムとコンテンツに反映し,各国の産業技術の発展段階に応じて応用可能な成果物を完成する。

     
社会科学を学ぶ留学生のための基礎教材開発 課題名: 社会科学を学ぶ留学生のための基礎教材開発
実施機関: 名古屋大学
概要:   明治期以降、日本は西欧の法制度を移植するとともに、外来の新しい機構と制度を運用する人間の養成、すなわち「人づくり」をきわめて重視してきた。冷戦の崩壊後、アジアの体制移行諸国は市場経済と体制移行に適応するための新たな人材を養成することが急務となり、日本は制度構築と人材育成の経験を知的支援として伝えることが、アジアの体制移行諸国から求められるようになった。
  名古屋大学法政国際教育協力研究センターは、大学院法学研究科とともに、1990年代以降、アジア諸国に対する法整備支援、とりわけ途上国、体制移行国の法学教育支援に取り組んできた。この間、法学研究科は、英語による日本法教育を行う留学生特別コースを設置し、アジア諸国から多くの留学生を受け入れるとともに、2006年からはウズベキスタン、モンゴル、ベトナム、カンボジアの学術交流協定校の協力を得て、「日本語による日本法教育」を行う日本法教育研究センターの設立を推進してきた。このプロジェクトは、上記4カ国の法科大学・法学部で学び、各国に設立した日本法教育研究センターに在籍する学部生を対象とし、各国の法学教育を受けながら、同時に比較対象として複眼的に日本法を学ぶことにより、将来、各国の法改革を担う人材を育成することを目指している。
  しかし、この過程で、外国人学生に日本語で社会科学を教えるための基礎的な教材と方法論、すなわち、(1)社会科学を目的とした場合の日本語教育の方法論、教材、カリキュラムとは何か、(2)一定の日本語を習得した段階で、社会科学をどのような方法により教育するのか、といった問題が、決して自明のものではないことも明らかになった。これらの課題を解決するために、本事業では、「社会科学を学ぶ外国人学生のための基礎教材開発」を目指す。
  本事業では、(1)社会科学を学ぶ外国人学生のための基礎教材として日本史・公民の教材開発、(2)テレビ会議等を活用する遠隔教育と現地での教育を組み合わせたカリキュラム・教授法の開発、(3)ウズベキスタン、モンゴル、ベトナム、カンボジアの日本法教育研究センターでの実践による教材の検証、(4)名古屋大学での外国人学生を対象にした講義での教材の検証、(5)教材の検証結果を踏まえた教育方法論の確立、を目指す。
  そのために、(1)関係者による事前の研究会の開催、(2)日本史・公民教材(レジュメ、スクリプト、ビジュアル教材)の開発、(3)ウズベキスタン、モンゴル、ベトナム、カンボジアの日本法教育研究センターおよび名古屋大学での留学生向け社会科学入門講義での検証、(4)検証結果の報告会の開催、を行う。これらの活動を通して、「社会科学を学ぶ外国人学生のための基礎教材開発」の方法論を確立し、社会科学分野における教育協力モデルとして公開することにより、国内外の援助関係者が教育協力の現場で活用可能な成果物を作成することを目指す。
     
アジアの開発途上国の拠点大学/学校における「災害看護学」教育導入への支援 課題名: アジアの開発途上国の拠点大学/学校における「災害看護学」教育導入への支援
実施機関: 日本赤十字九州国際看護大学
概要:   日本は災害が多発する国の一つであり、また、被災者数が最も多い地域の近隣に位置している。災害は、世界のいずこにも発生するが、自然災害に限っても、7割は開発途上国に発生しており、被災者の実に98%は開発途上国住人である。これを地域別にみれば、全体の4割が人口過密なアジアに発生しているため、被災者数の86%はアジアの住人という事実になっている(世界災害報告,2008)。災害発生時、保健医療専門家の中で最も数が多く、また、普段から患者・住民に最も近い存在である看護職が大きな役割を果たし得ることは、阪神淡路大震災以後、日本の災害救援の中での基本的了解事項となりつつある。
  日本における災害看護学は、最近ではその教育が必須化されてきているが、他の看護学領域に比べれば後発の分野である。しかし、開発途上国には、未だ“災害看護学”という用語すらなく、当然その教育も存在しないところも少なくない。しかし、近年多発している大規模自然災害に対処するため、災害看護学教育のニーズは著しく高まっている。
  わが国は、過去十数年に、この分野を目覚ましく発展させた実績を持つが、今まさに災害看護学の急速な確立を必要としている国々に、そのknow-howを伝達することは、きわめて効果的な国際貢献となると考えられる。
  本計画を通じて、災害看護学の萌芽から発展に至るプロセス、即ちカリキュラム・教材・教授法を開発するknow-howを、近隣の災害多発国で被災者数が多い国々、特にわが国との関連も深いインドシナ半島諸国(ベトナム、ラオス、カンボジア)など、アジアの開発途上国の拠点大学/学校への災害看護学教育導入のきっかけとし、現地人材による継続的発展を目指すことが概要である。


平成21年度における活動概要
1)対象国:
  ベトナムとする。日本の国際保健医療分野の指導的立場にある本学学長喜多悦子が、1990年代、ベトナムにおけるODA(国立国際医療センター勤務時のJICAプロジェクト)およびWHO災害対策(WHO本部緊急人道援助部勤務時)に深く関与した経緯があり、また、平成21年4月に在福岡領事館が開設されるなど、本学の所在地とのつながりも強いためである。

  国際連合の報告によると、ベトナムは自然災害被害の世界ワースト10内にあり、過去10年の統計では、台風・洪水・土地侵食・干ばつなど、多様な自然災害による年平均損害額が国内総生産(GDP)の1.5%に相当している。また、道路や交通ルールなど社会インフラの整備が追いつかないまま急激な経済開発を進めたためか、人為災害である交通事故が10大死因中第8位(WHO,2006)である。その他、産業発展に伴う労働災害問題の深刻化も指摘され、いわゆる多様な「健康の危機」対策のニーズが増大している。
  日本はベトナムに対し1970年代に医療支援を開始し、いわゆるベトナム戦争により中断したものの、90年代に再開した保健医療支援は、きわめて活発である。しかし、医学教育や医師の卒後教育面への支援に比し、看護教育への関与はほとんど行われていない。また、現在、ベトナムの基礎看護教育課程には災害看護学が導入されていない(NUISING IN THE WORLD,2008)ため、多様な災害の発生頻度からして、災害看護学教育のニーズは高く、成果は明らかであると予測される。

2)活動概要
  日本赤十字九州国際看護大学は、本邦唯一国際を標榜する看護単科大学として、2001年開学以来、多様な国際活動の実績を積んでいる。全教員49名中30名以上、看護保健系教35名中、本年採用8名を除き、ほぼ全員が途上国経験(赤十字活動、JICA関与、学生引率)をもっているほか、全教員がJICAもしくは日本赤十字社の委託による途上国専門家の受け入れ研修に関与している。
  さらに、2003年来、世界最高レベルの人道援助研修H.E.L.P(Ⅰ:Health Emergencies in Large Populations、Ⅱ:Health, Ethics, Law, and Politics.本学主催、日本赤十字社、赤十字国際委員会、世界保健機関<WHO>共催)を、アジアで初めて隔年継続開催している。本研修は、1986年、ICRCが開始し、以後、毎年、世界各地で10~12コースが主に医系大学の主催で開催されているが、看護大学で主催しているのは、世界中で本学のみである。

  本計画では、まず、災害看護学教育導入のきっかけとして、① 相手国のキーパーソンまたは災害看護教育導入の意思決定にかかわれる実務家を、平成21年度に開催するH.E.L.P. in JAPAN 2009研修に招聘し、② 平行して、本学スタッフを現地に派遣して、相手国の実態調査をする。これらの間に、③ 可能なルートを用いて、実務、教育、政策レベルなどの関係者と意見交換し、認識共有するための土壌醸成を図る。初年度に、④ モデル校となりうる看護系大学/学校または関係機関との協働体制を構築し、⑤ モデル校となる看護系大学/学校の教員に対して、本学教員が現地訪問し、災害看護学のセミナー/ワークショップを展開する。
     
教育協力プロジェクトのモニタリング・評価指標ガイドブックの開発-学校教育編 課題名: 教育協力プロジェクトのモニタリング・評価指標ガイドブックの開発-学校教育編
実施機関: 教育協力NGOネットワーク
概要:   プロジェクト・サイクル・マネジメント手法の普及とともに、日本のNGOによる教育協力事業においても、上位目標、プロジェクト目標、成果の達成度をモニターし、評価するために指標、指標データ入手手段を事業形成時に設定することが一般的となっている。しかしながら、個々のNGOが過去の経験から得られた知見から指標を設定しているケースが多く、指標の妥当性および入手可能性は必ずしも適切とは言えないケースもある。この問題の要因のひとつに、教育課題解決のための介入別の指標、データ入手方法、分析方法をとりまとめたハンドブック類がないことがあげられる。特に、教育指標の定量分析の方法について実践的なハンドブックの開発が求められている。
  本計画は、教育協力事業の上位目標、プロジェクト目標、成果の各レベルの定量的な指標の設定、指標データの入手方法、データの分析方法についてのガイドブックを開発することを目的とする。データの入手方法、分析方法については定量分析の理論・方法(サンプリング、平均差の検証、回帰分析等)を活用する。そのために定量分析の専門家による協力を得る。
  本計画は2年間の計画とし、第一年目は、学校教育分野の協力事業の指標についてのガイドブックを開発する。学校建設、教員研修、教材開発、学校運営という4つの協力事業ごとに各レベル(上位目標、プロジェクト目標、成果の指標を扱う。第二年目は、学校外教育分野の協力事業の指標についてのガイドブックを開発する予定である。
  本計画では、途上国での協働によるハンドブックの開発ならびに開発途上国での検証を以下のプロセスによって保証する。第一に、教育協力NGOネットワークに参加している28のNGOの中から事業規模、介入の内容・方法が比較的典型的であると考えられる学校建設、教材開発、教員研修、学校運営分野の4つの協力事業の事例を選定する。事例は、途上国での実際の教育協力事例であることから、立案、実施プロセスに途上国のカウンターパートである教育行政機関および住民組織との協働作業が既に行われている。たとえば、学校建設事業の場合、州あるいは県政府レベルの教育局、学校委員会等とのカウンターパートと協議、合意を経て、事業の形成、実施が行われている。
  第二に、専門家の協力によって、これらの事業の各レベル(上位目標、プロジェクト目標、成果)の指標、データの入手方法、データの分析方法を検討、改善し、モデル案を作成する。この段階において、途上国のカウンターパートとの協議を行い、特に、指標データの妥当性、入手容易性についてコメントをいただき、指標モデル案に反映させる。
  第三に、開発されたモデル案を事例の事業が実施されている途上国において検証する。この段階では適用事例を実施しているNGOの海外事務所(合計4カ国の予定)にモデル案(指標、入手方法、分析方法)についての検討を依頼し、カウンターパートである教育行政機関関係者や現地NGO等からのフィードバックをもらう。
  第四に、以上のプロセスを経て、汎用性の高い学校教育分野の協力事業の指標モデルについてハンドブックとしてとりまとめる。実際に途上国で実施されている教育協力事業を事例を基に、途上国政府、住民組織からのインプットを通じた協働作業によって、NGOを含む教育協力関係者にとってより実践的で役に立つハンドブックの開発が可能となると考えられる。
  ハンドブックの構成案は以下のとおり。
1.教育協力事業における定量分析の有効性と限界
2.学校建設事業の指標と分析方法
3.教員研修事業の指標と分析方法
4.教材開発事業の指標と分析方法
5.学校運営改善事業の指標と分析方法
     

Ⅱ. 教育研究経験の活用(ESD)

ザンビアの基礎学校におけるESDモデル単元教材の開発 課題名: ザンビアの基礎学校におけるESDモデル単元教材の開発
実施機関: 北海道教育大学
概要:   平成20年度国際協力イニシアティブ事業「サブサハラの基礎教育におけるESDモデル単元カリキュラム・教材開発」では、まず基礎調査で、ザンビアの人々の暮らしにおける「水」をめぐる現状を明らかにするとともに、理科や社会科など「水」に関連する科目のシラバスや教科書を分析した。また、教育行政官へのインタビューから、現地の学校で活用できる教材へのニーズが高いことがわかり、さらに、学校での授業観察より、学習者中心の指導法の重要性を確信した。
  そこで、ザンビアのカウンターパート(教育行政官2名と学校教員2名)との協働により、教育省のシラバスに基づきながら、「水」をテーマとする教材を開発し、それらを成果物『水をテーマとしたESD教材集』としてまとめた。
 今年度は、昨年度の成果を踏まえて、次の活動を計画している。
 ■ザンビアおよび日本での授業観察や検討会を通じて、昨年度開発した教材をさらに改善する。
 ■新たに教材を開発し、教材集をより充実したものにする。
 ■学校教員がハンドブックとして使いやすいように、授業での活用方法など教員向けの説明を増やす。
 ■ESDに対する理解を深めるために、ESDの意義について解説を加える。
 ■成果物『水をテーマとしたESD教材集ハンドブック』を英文および日本文で印刷、配布する。
     
動物園を活用したマダガスカルのESDパイロットマテリアルの構築 課題名: 動物園を活用したマダガスカルのESDパイロットマテリアルの構築
実施機関: 宮城教育大学
概要:   アフリカ東南部に位置するマダガスカル共和国は、後発の開発途上国であり、豊かで特異な生物多様性を有する一方、人為的環境劣化による環境破壊が急速に進行している。同国の国立チンバザザ動植物公園(以下、チンバザザ動物園)は、首都アンタナナリボ市に位置し、年間20万人以上の来園者のある国内最大級の動植物園・博物館である。チンバザザ動物園は同国の生物多様性に関わる情報を収集し、海外を含む多くの機関と連携して、生物多様性保全に関わる事業を進めている。チンバザザ動物園と仙台市八木山動物公園が進める連携事業はその一つに数えられるものであり、2008年には、両者の交流に基礎を置くJICAの草の根技術協力事業「自然保全のための環境教育実践プログラム研修」が発足、宮城教育大学(実施責任者:齊藤)はこの中で、チンバザザ動物園の職員・技術者を対象に環境教育実践プログラムの企画・指導助言を担当している。現在宮城教育大学は、チンバザザ動物園における環境教育のための人材育成支援・実践指導、および動物園来園者に提供する環境教育教材の開発を動物園関係者と共同で進めている。
  ESDにおいて、環境教育の果たすべき役割は大きく、これまで私たちが進めてきたチンバザザ動物園職員に対する指導助言や協働活動によって、チンバザザ動物園の職員に対するESD手法の円滑な移転が可能になり、動物園職員による来園者へのESDの機会が増加し、加えて、動物園をフィールドとした学校のESDの企画が容易になっている。本事業では、草の根技術協力事業における宮城教育大学の協力経験と本学の国際協力イニシアティブ事業成果を活用して、チンバザザ動物園がESDを進めるための教育マテリアル(教材・指導法群)を開発・提案する。動物園におけるESDの試行を進め、年度末には事例成果とともにESD実践を可能とする指導者用マテリアルを作成する。
  (次年度は、その事例成果を学校教育へ還元するための取り組みに発展させる。すなわち、動物園と近隣学校(初等教育)との連携を促しチンバザザ動物園を学習フィールドとし、「生物多様性の意義を認識し、それを尊重する価値観と態度を育むこと」、「それをもとに持続可能な社会の構築を目指す考え方を獲得すること」をテーマとした現地教育者用指導教材をつくる。)
     
日本と南アフリカの小中学校連携を軸とするESDモデルの構築実践の試み 課題名: 日本と南アフリカの小中学校連携を軸とするESDモデルの構築実践の試み
実施機関: 国際基督教大学
概要:   本事業は、日本と南アフリカ共和国の大学が協力し、双方の小中学校間の連携を軸とするESDモデルを構築し、学校現場でのモデル実践を試み、教材や教授法のような成果物として形の残る研究実践活動と位置づけている。平成20年度に引き続き、既に締結している大学間学術交流協定を基礎に、双方の国の小中学校教員を交えた共同研究ネットワークを形成し、日本と南アフリカの児童生徒(特に4?6学年を対象)が「持続可能な開発」について共に考え、共有できる価値観を理解しあえる教育モジュールを開発する。その内容はビデオレポートとして作成し、関係希望者と共有できるようにもする。双方の大学が保有するICT通信設備やその他のIT技術を活用する事により、事業の効率的実施を図る。また事業の一部として、参加している教員と関係者が双方の小中学校を訪問し、セミナーやワークショップを通してお互いが共に双方の教育現場の長所を取り入れた研究開発を試みる機会を積極的に事業の一部として取り入れる。
     
開発途上国の初等教育における食農環境教育の普及と推進モデルの構築 課題名: 開発途上国の初等教育における食農環境教育の普及と推進モデルの構築
実施機関: 東京農業大学
概要: (1)活動の背景
  メコン河における河川水質の観測は1984年に始まり、カンボジアが1992年に参加してからは、メコン河の100数箇所で月ごとに観測が続けられているが、近年、肥料成分の流出による富栄養化が大きな環境問題となっている。これは、メコン河流域における化学肥料や農薬に依存した単一作物栽培による集約的農業の拡大に原因があると考えられている。自給自足型から輸出志向型農業へ変貌するに伴って化学肥料や農薬の農地への投入量が年々増大傾向を示す中、乾期には作物残渣の火入れも行われており、土壌の劣化とともに池沼等の富栄養化が進行しつつある。特にメコン河流域に位置するカンボジア国でも、内戦終結後の1990年代以降、農業の生産性を高めるため、化学肥料や農薬の使用量が増大傾向にある。そのため有機農業の推進によって化学資材の使用を抑制し土地生産性の回復を図ると同時に、安全食料の生産と水環境の修復保全を進めることが急務となっている。この複合的で深刻な問題を解決するためには、食農環境が三位一体であること、その具体的教育モデルの構築と普及を図ることが不可欠で、それこそ持続的発展の基盤づくりとなる。
  この食農環境教育は「持続可能な開発のための教育(ESD)」の一環としても位置づけられ、大学・中等・初等学校等の公的教育機関の連携のみならず、国・地方行政機関やNGO・コミュニティ等の非公的機関との連携が重要となっている。特に食農環境教育においては初等教育における導入が重要なため、小学校に重点をおいて持続的農業や水環境保全を軸とした食農環境教育を推進し、環境に考慮した持続的農業の素地づくりを進めることが必要である。
(2)過去の活動実績と課題(平成18年度-20年度:3年間)
  そこで文部科学省より平成18年度から20年度の3年間、教育協力拠点形成事業「国際協力イニシアティブ」の受託を受けて、NGOと大学との連携による食農環境教育の支援システム化に関する活動に取り組んできた。3年間の活動を通して、東京農業大学、特定非営利活動法人環境修復保全機構、タイ国カセサート大学、カンボジア国王立農業大学、Association of Environmental and Rural Developmentと共同でNGOと大学との連携による食農環境教育の支援システム化に関するワークショップを開催し活動実施者間の情報共有を深めつつ、タイ国コンケン県およびカンボジア国プノンペン市の小学校において堆肥づくりや有機農園を軸とした食農環境教育セミナーを開催し、適時アンケート調査を実施して活動内容や教材に対する理解度の評価を行った。これらの活動に併せて、平成19年度には、英語・タイ語・クメール語・日本語で書かれた教材「持続的農業と有機肥料」を、また平成20年度には英語で書かれた教材「環境保全に向けた持続的農法」を発行し広く配布を行った。
  特に平成20年度の活動では、タイ国コンケン県の小学校を対象に「Eco-Agricultureコンテスト」を実施し、環境問題と持続的農業に向けた各小学校の取り組みを展示して活動紹介を行った。それぞれの活動および展示内容やブースでの生徒のプレゼンテーションに基づいて、現地大学やNGOおよびコンケン教育センター副所長らが審査するものであったが、大変な盛り上がりを見せた。審査の結果、Golden Apple Snail(カタツムリの一種)を利用した生物起源防虫液づくりに取り組んだBan Wha小学校、小学校の給食に向けた有機野菜栽培の発表を行ったBan Hoymoung小学校、食品残渣を用いた有機肥料づくりを取り上げたBan Kanond Nakorn小学校の3校が表彰されたが、コンテストの開催は自らの発表のみならず、他校の食農環境に関する取り組みを学習する機会を与えるものと高く評価できた。これらの活動から、食農環境教育に関する支援制度を整備して研修会等の充実やモデルの表彰等を通した活動の奨励を充実させることにより食農環境教育の推進に大きく寄与するとともに、NGOと大学との有機的な連携によって効果的な食農環境教育が実施されることが実証された。一方、タイ国に比べるとカンボジア国の小学校教員や学生の食農や環境に対する意識が低く、カンボジア国における食農環境教育の活性化が課題として残り、今回の活動計画の立案に至った。
(3)活動の目的
  本活動はカンボジア国に対象を絞り、さらにカンボジア国で「持続可能な開発のための教育(ESD)」における地域の拠点(RCE)づくりを推進する国際連合大学を共同実施者に加えて実施する。すなわち、東京農業大学、国際連合大学、カンボジア国王立農業大学、特定非営利活動法人環境修復保全機構、Association of Environmental and Rural Development(AERD)が中心となって、現地政府、現地NGO、農村コミュニティと連携を図りつつESDにおける食農環境教育モデルをカンボジア国内の小学校で推進するとともに、クメール語版「環境保全に向けた持続的農法」を印刷・配布する。さらにESDにおける食農環境教育の推進を目指して小学校教員の研修会を実施するとともに、「環境に配慮した持続可能な農村開発に関する国際会議」を開催し、カンボジア国内外の研究者や実務者の発表に基づき、カンボジア国でのESDにおける食農環境教育の方向性を論議していく。またカンボジア国でのESDにおける地域の拠点(RCE)づくりに向けて連携協力を進めていく。特にRCEづくりにおいては、カンボジア国環境省をはじめ教育省や農林水産省等の関連省庁を挙げて立案に取り組み始めたところであり、そのRCEづくりに連携協力することによって、本活動の成果がカンボジア国の教育・環境に関わる政策に直接繋がっていくものと考えられる。
     
RCE国際連携によるESD人材育成プログラムのモデル構築 課題名: RCE国際連携によるESD人材育成プログラムのモデル構築
実施機関: 横浜国立大学
概要:   ESD(持続可能な開発のための教育)の地域拠点(RCE:Regional Center of Expertise)として認定されているRCEペナン、RCEセブ、RCE横浜の拠点大学が共同でESD人材育成のためのサマープログラムを開発する。平成21年度は主としてマレーシア科学大学を実施拠点として、フィリピン大学、横浜国立大学の研究者がサマープログラム(モデュール、実施計画、教材)を開発する。
  横浜国立大学では平成19年度以降、国連大学高等研究所・マレーシア科学大学との連携のもとに、国際協力を専攻する大学院生をペナンに派遣し、フィールドワークとセミナーを通じてESDを学ぶスタディツアーを実施してきた。今回申請する国際協力イニシアティブは、これまで横浜国立大学が蓄積してきた海外実地教育の経験をもとに、RCE国際連携の枠組みを活かして、日本・マレーシア・フィリピンにおけるESD人材育成のためのサマープログラムを開発するものである。具体的には、平成21年8月にペナン(マレーシア)においてRCE国際ワークショップを開催し、マレーシア科学大学、フィリピン大学、横浜国立大学の研究者がペナンをベースとするサマープログラムのモデュールや教材の開発を行う。また、8月後半にはESD人材育成に関する国際セミナーを横浜で開催し、横浜をベースとしたESDの学習モデルについて専門的な検討を行う。また、平成22年1月には横浜国立大学の研究チームをペナンに派遣して、開発したサマープログラムを試験的に実施し、プログラムの有効性について検証する。そして平成22年2月までに研究成果をとりまとめ、サマープログラムのモデュールや教材を盛り込んだ最終報告書を作成し公表する。
  なお、開発するサマープログラムの内容としては、以下のようなものを構想している。まず年度当初に、環境科学や社会科学等異なる専門領域を専攻する大学生(学部生・大学院生)を公募してスタディチームを編成する。スタディチームは春季期間に講義と演習によるアカデミックトレーニングを受けたのち、夏季期間中にペナン(マレーシア)で実施するサマープログラムに参加し、ESDに関するインテンシブな教育を受ける。同様のモデュールはマレーシア科学大学やフィリピン大学においても作成することとし、ペナンのサマープログラムでは各国の学生グループが一堂に会してESDの実践課題を討議し、ESD人材に求められる能力の構築を図る。ペナンからの帰国後は、RCE横浜との協力のもとに、横浜地域をベースにフィールドワークを行い、各自の研究テーマについてタームペーパーをとりまとめる。そしてプログラム修了者には、所定の単位を認定するとともに、ESD人材育成プログラム修了書を交付する(モデュール案については、添付資料を参照)。
  本事業の特徴は、開発するモデルの国際性・学際性・地域性にある。これまで横浜国立大学では、国連大学高等研究所・マレーシア科学大学・フィリピン大学との連携のもとに、地域の文化的多様性や伝統的知識を尊重したアジア視点のESD教育プログラムの開発に取り組んできた。今回申請する事業は、このスキームをRCEのマルチな国際連携に発展させ、サマープログラムを通じてマレーシア・フィリピン・日本のESD人材の育成を図るものである。学際性については、本事業では日本・マレーシア・フィリピンの環境科学・開発学・公衆衛生学の専門家に呼びかけ、多面的な観点から、科学的合理性と社会的有用性を兼ね備えた実践性の高い人材育成モデルを構築することを企図している。本申請に先立ち、横浜国立大学では国際社会科学研究科と環境情報研究院の合同研究チームを2009年3月にペナンに派遣し、学際的な研究がもつ高い教育効果を改めて確認したところである。そして地域性に関しては、RCEの特徴である大学と地域との連携を最大限に追求し、コミュニティに根ざしたESD人材の育成に取り組みたいと考えている。かかる観点から、サマープログラムにおいてもRCE横浜の多様なステークホルダーや学生サークルとの連携を図り、地域性を踏まえたESD人材の育成に取り組む予定である。
     
 アジアにおけるESD国際協力カリキュラムの開発―高等学校を中心にして― 課題名: アジアにおけるESD国際協力カリキュラムの開発―高等学校を中心にして―
実施機関: 大阪大学
概要: (活動要旨)
  ESD(Education for Sustainable Development)で扱うべき内容は、人権・平和・自然環境・貧困・健康・多文化・教育・情報などの多岐にわたる。現代の社会を、持続可能な社会へと転換することを目指して、ESDをどのように進めるか、あるいはその目標や方法をどのように設定するかは、それぞれの国や地域の実情に応じて大きく異なっている。そこで、本事業活動は、各国の事情を踏まえながら、アジア各国でESDの共通目標とプロセスを共有することで、アジア地域としての共通のESDの取組みの可能性を目指すものである。
  本事業は、大学での豊富な途上国支援の研究成果と、大阪の高校が進めてきたUNESCO ASPnet(Associated Schools Project network)での多国間協同実践の成果に基づき、アジア地域の高等学校でESDの国際カリキュラムモデルを多国間の参加と協同作業によって開発する。これにより持続可能な社会に向けて求められる能力・知識・意欲・態度・価値を、アジア各国の高等学校が共有し、実践することを目指す。参加する国は、UNESCO ASPnet に積極的に参加しているタイ、フィリピン、中国、韓国の各高校であり、今年度は日本の3校とアジア4カ国から1校ずつ、計7校が参加する。
  なお、今後Asia ASPnetを始めとする多くの学校でこの国際カリキュラムモデルを用い協同実践を発展させる予定である。
(特 徴)
  本事業における国際カリキュラムのモデル開発の特徴は、日本を含めたアジア各国の異なる地域・学校の教員・生徒が参加型手法により共同かつ創造的にESDの国際カリキュラム構築を行う点にあり、日本で策定したESDのカリキュラムをそれぞれの国で実施する輸出型カリキュラムとは異なる。参加型手法を採用することにより、対等な立場で諸地域の教育・社会における「持続性をもたらす要因・現象」等を相互に理解しながら実践可能なカリキュラムづくりを行うことができる。それは、開発されるカリキュラムもさることながら、その開発の過程そのものが、ESDの目指す、特定の社会に暮らす人にのみに未来が開かれているのではなく、誰もが対等であることを明らかにするものである。したがって現段階ではカリキュラムの内容については未定である。
(実 施)
第1ステージ:国際カリキュラム作成のためのフレームワークづくり
  最初に、大阪大学(中村安秀、前迫孝憲)・お茶の水女子大学(内海成治)が有する途上国支援の豊かな研究成果と、UNESCO ASPnetに加盟し、協同実践を重ねてきた大阪の3つの高等学校(大阪教育大学附属高等学校池田校舎・大阪府立北淀高等学校・羽衣学園高等学校)の経験を合わせて、ESDの国際カリキュラムを開発するための多国間フレームワークを形成する。具体的に、ESDで扱うべき人権・平和・自然環境・貧困・健康・多文化・情報などの多岐にわたる諸課題を、生徒の身近に起こっている課題や問題と結びつけ、5カ国の生徒が共通して学習すべき課題・問題を抽出して国際カリキュラムとして構成するための枠組みを明確にする。
第2ステージ:国際カリキュラム試行版の協同開発
  アジアの各国高校教員がワークショップを行い、先のフレームワークをもとに試行のためのカリキュラム原型を作成する。したがって、現段階(申請段階)ではカリキュラムテーマおよび内容は決めることはできないが、国際カリキュラムに相応しく開発プロセスそのものに関係国教員が参画する形態で行われる。この第2ステージでの実践活動は国際的な参加型カリキュラム開発のプロセスの研究過程でもある。
  協同開発されるカリキュラムは、①目標(知識・技能・態度)、②内容項目、③指導法(学習法)からなる。とりわけ指導法はESDの理念、及び多国間での汎用性などの観点から「羅生門的アプローチ」や「工学的アプローチ」*などを検討しながら進める。この段階において大学と各国高校教員の連携により国際カリキュラムテーマと内容の原型が創られる。(*前者は、授業の一般目標を重視したカリキュラム、後者は行動目標を重視したカリキュラム。)
  ただし、本年度は「組織化・策定・調査・実施・検証・評価」を単年度で実施する必要性から、国際カリキュラム試行版を開発する。試行版は、6回~8回(6時限~8時限)分のカリキュラムとして開発することを考えている。この時間配分は高等学校における各教科の単元構成と比べて同等の学習展開が可能だからである。
第3ステージ:国際カリキュラム試行前の事前調査の実施
  開発する国際カリキュラムの効果を明確に把握するために、カリキュラムの実施前の生徒の授業テーマに関する知識・態度・価値などを事前に調査する。この調査は各国において中心的な設問(コア)を共通にしたものとし、各国間での比較・分析が可能なものとする。
第4ステージ:国際カリキュラム試行版の実践
  2009年11月~2010年1月末までの間、各国の実情に合わせた適切な時期に参加高校において、協同開発された国際カリキュラムを試行する。
第5ステージ:国際カリキュラム試行版の検証
  2010年2月ごろ、開発した国際カリキュラム試行版の実践成果を検証する。とりわけ生徒の社会の持続可能性に関する能力に着目する。これは数値の検証ではなく、具体的な能力について生徒間のディスカッションや相互検証を行って確認する。また教師どうしのワークショップによって、このカリキュラムの課題を明確にする。こうした学びの場を総合して、次年度のカリキュラム改訂を行う。
     
持続発展教育(ESD)の理念に基づいた途上国における地域医療教育モデル導入と普及 課題名: 持続発展教育(ESD)の理念に基づいた途上国における地域医療教育モデル導入と普及
実施機関: 三重大学
概要: (背 景)
  地域に目を向け、地域に根差した活動のできる医師の育成のために、大学(病院)のみならず地域を学習の場とする地域基盤型医学教育(Community-based Medical Education:CBME)が、近年行われている。いくつかの先進的な大学では、地域の健康課題に基づいたプロジェクトを学生が企画し住民とともに取り組む実習を行っている。それは、地域のニーズに沿って活動し、健康を支援する環境を作り出すものであり、医療資源に乏しいへき地や途上国ではそうした活動がより一層求められる。
  国連「持続可能な発展のための教育(ESD)」は、持続的な発展のための知識や価値観、行動を育むものである。医学教育領域でESDに触れられる機会はこれまでほとんどなかったが、実は、ESDとCBMEには、多くの共通する価値観、特徴、アプローチ法が存在する。よりよい未来像を描くこと、問題解決能力や体系的な思考力、情報分析力、コミュニケーション能力はその一端である。さらに、パートナーシップを確立し、対話と交渉を繰り返して協働すること、意思決定の場に参画し、人々のエンパワメントを行うという行動は、地域医療を担う医師に共通に求められているものである。
(これまでの取り組み)
  ESDのスキルを学び“持続可能な社会づくり”に取り組むことは、地域医療を担う人材育成につながる。本課題では、ESDの理念に基づいた地域医療教育プログラムを開発し、卒前医学教育に導入することを目指している。我々は、平成20年度の国際協力イニシアティブ事業において三重でワークショップ(以下、WS)を開催し、三重大学と協定を結ぶタイ、タンザニア、アラブ首長国連邦(以下UAE)の各医学部の教員と共にESDの視点から学生用および教員用の実習手引書version1.0を作成した。その後、WS参加者は各大学に戻り、地域医療教育担当部門にWS内容を報告するとともに実習手引書を配布するなどして、カリキュラムへのESD導入に向けて計画作りを行ってきた。電子メールでやりとりを続けているが、タイ・コンケン大学、タンザニア・ムヒンビリ健康科学大学とも、医学教育へのESD導入を非常に意義あることと受け止めている。しかし、いずれの医学部においてもESDという枠組みに出会うのは初めてのことであり、それぞれの大学においてFaculty Development(以下FD)を行う必要を感じるとの報告を受けている。
(今年度の取り組み)
  本年度は、昨年度WS参加者の要望に応えて、FDのためのWSをタイとタンザニアの医学部で行い、学生実習への導入を支援する。タンザニアよりも進んだ地域医療教育を行っているタイ・コンケン大学のWSにタンザニア教員にも参加してもらい、タンザニアでのFDに活用していただくよう計画している。また、隣国ラオスからも国立大学教員を招待し、ESDを学ぶ機会を提供する。その過程を通してESDの理念に基づくCBMEの新しい教育モデルが、タイ、ラオスならびにタンザニアで受け入れられるか、成果物は有効かを検証する。さらに、WSにおける討議を反映して実習手引書改訂版(ver 2.0)を作成し、成果物とする。そのほかESDとして役立つ地域医療実習例を日本、タイ、ラオス、タンザニア、UAEの医学部で収集し、「地域との協働プロジェクト事例集(英語版)」としてまとめる。
(事前準備)
  なお11月のタイにおけるWS開催に向け、三重大学国際交流基金から助成を得て6月にコンケン大学を訪問し事前打ち合わせを行うことになっている。その際、ラオス国立大学も訪問して、昨年の成果物を渡しWSへの参加を呼びかけることとしている。
     
持続可能な発展に向けた教育に励む大学の価値と魅力を伸ばす評価モデルづくり 課題名: 持続可能な発展に向けた教育に励む大学の価値と魅力を伸ばす評価モデルづくり Creation of the Alternative University Appraisal Model based on Education for Sustainable Development
実施機関: 北海道大学
概要:   持続可能な社会づくりが人類の喫緊の課題である中、北海道大学はアジア-太平洋地域の高等教育機関と協力して、国際社会が要請する新たな大学モデルを提示し、この大学モデルを目指す発展途上国の大学を支援するための道具として、「ESD大学評価モデル= Alternative University Appraisal Model based on ESD」を開発し、これをもって発展途上国におけるESDの発展に寄与する。
(事業の目的)
  アジア-太平洋地域で「持続可能な発展のための教育(Education for Sustainable Development=ESD)」に従事する大学の価値と魅力の増大を目指し、これからESDを導入したい、もしくはこれまでのESD活動をより深化させたいと希望する発展途上国の大学を支援する道具を開発する。
  この道具は、「ESD大学評価モデル= Alternative University Appraisal Model based on ESD」と称するものである。この評価モデルは、大学がESDの観点から自らの現状を深く観察する際の「目の付け所」を指南するものであり、加えて、努力・改善すべき点の特定を助けるものである。言い替えると、ESDをより実践的に取り組む大学へと進化するために必要な大学自身の学びを助ける「ガイドライン」であり「道しるべ」である。
(進め方)
  アジア-太平洋地域環境大学院ネットワーク(ProSPER.Net)を構成する18の高等教育機関の中から、北海道大学、マレーシア科学大学(ペナン市: USM)、テリー大学(インド・ニューデリー市:TERI)、ならびに事務局を担う国連大学高等研究所(横浜市: UNU-IAS)の4機関がコアメンバーとなって「モデル構築チーム(Alternative University Appraisal Team)」を構成し、他メンバーと協力をしつつ当事業を進める。
  まずモデル構築チームは、これまでに日本国内外で行われた「ESDの取組手法」や「ESDの取組評価」「ESDの導入支援」に係る研究成果を収集する。そしてこれらを活用して、アジア-太平洋地域における理想的なESDのありよう(ESD大学モデル= Alternative University Model based on ESD)を定める。さらに、このESD大学モデルへの到達度合いを推し量る際に活用する「ESD大学評価モデル」案を開発する。
  会合やシンポジウムなど様々な機会を捉えて、ProSPER.Net のメンバー大学をはじめESDに積極的に取り組んできた経験豊富な世界の大学、そしてESDの促進を担う国際機関の専門家から、この案について意見を徴収する。また、この案をインターネットを通じて公開し、広く世界から意見を徴収する。そして集めた意見を参考にして「ESD大学評価モデル」を洗練させる。
     
モザンビークと日本との協働によるグローバル倫理形成を目指したESD教材の開発 課題名: モザンビークと日本との協働によるグローバル倫理形成を目指したESD教材の開発
実施機関: 愛媛大学
概要:   本申請事業は,開発途上国と先進国とが共に持続可能な社会を目指すために必要なグローバル倫理の形成に役立てることのできる,高校生および大学生初年次生レベルを対象としたカードゲーム型ESD教材を作成することを最終目標とする。また,開発するESD教材自体の持続的利用を図るため,教材の活用に必要な実践者の養成を両国の高等教育機関を主体として行う仕組みと必要なマニュアルを作成するとともに,両国の教員研修やESD実践者会議などの機会を利用して継続的に実践者へ普及するしくみを構築する。なお,本事業では本モデルを広く普及することを目的に教材の作成に至るまでのプロセスを重視し,詳細に記録すると共にマニュアルの中に含めて報告する。さらに,愛媛県内およびモザンビーク対象地域内の高校生および大学生初年時生がインターネットテレビ会議を活用してインタラクティブなやりとりの中で臨場感のあるESD学習活動を展開することができるICTのしくみを取り入れる。
  本年度は,モザンビーク教育文化省,モザンビーク環境調整省,Lurio大学,Eduardo Mondlane大学の関係者との連絡調整を行うことと,教材を活用する日本側とモザンビークの高校生および大学生初年次生自身による教材資源の掘り起こしを通じた教材開発を行うため相互往来型の開発会議を行う。相互往来時には,相互の関係者が現地で調査と議論を展開しながらカードゲームを作成する。
  最終目標を目指して,本年度実施する事業はカードゲーム型ESD学習教材の作成および,教材の活用に必要な参加者用および実践者用ESD教材マニュアルを作成する。また,次年度の教材完成と本格実施を目指して,実践者養成のための研修プログラムを作成する。また,事業実施中および事業終了後も継続的にモザンビーク教育機関と愛媛県内教育機関とがインタラクティブな交流を通して教材を活用できる仕組みとして,モザンビークでも活用する仕組みが整っている安価なインターネットテレビ会議システムを利用したローコスト・ローテクICT遠隔授業の試行を行う。また,この仕組みを利用した国際トーナメントの開催を目指した準備を行う。
     

Ⅲ. 現職教員の支援

海外教育協力者に対する教育実践指導と教育マテリアルの支援 課題名: 海外教育協力者に対する教育実践指導と教育マテリアルの支援
実施機関: 宮城教育大学
概要:   宮城教育大学は、環境教育分野の教材や教育手法を活用して、青年海外協力隊派遣現職教員に対するサポートを進めている。これまで、環境教育実践事例データベース青年海外協力隊活動データベース、教材資料集(紙芝居教材、素材パーツ集、環境教育用語集等)、協力隊活動の阻害・貢献要因シミュレーション教材とそのデータベースを協力隊員へ提供した。
  本来、環境教育分野における教材は、教科横断的で人の暮らしに密接した課題を多く扱うことから、隊員の職種を限定することなく、多くの隊員の基礎的および発展的活動に役立てられる。特に、青年海外協力隊活動データベースと阻害・貢献要因シミュレーション教材は、全ての協力隊員の日常の教育業務の計画とその推進に役立つものである。私たちは、環境教育分野の枠組みの中で教材支援を進めてきたが、新たな視点として、これまでに蓄積した教育資源を活用しつつ、学校教育の障害となる教育課題(分野を特定しない)の解決・改善に寄与する教材を作成すれば、より効果的な支援が可能となると考えている。
  そこで、今年度の事業では、①これまで進めている環境教育分野の教材支援を継続することに加えて、②これまでに蓄積した教育資源を活用して、協力隊員の日常的な教育課題を解決するための教材(教科横断型の教材:紙芝居教材、課題解決型のクリップアート集)を作成し提供する。教材作成に際しては、課題の分析に派遣中隊員からの情報収集と、小学校教諭の活動事例(教育の最も基礎的で多様な事例)を参照する。作成した教材は、職種を限定することなく、多くの隊員へ提供される。
  支援区分としては、派遣前隊員、派遣中隊員、および帰国隊員に対する教育支援を実施する。特に、派遣前隊員支援では、阻害・貢献要因シミュレーション教材に焦点を絞る。隊員活動報告から多数の阻害要素と貢献要素を取り出し、隊員の課題解決能力を高める教材を提供する。派遣中隊員支援では、環境紙芝居をベースに、学校教育と住民教育(啓発的取り組みを含む)の教育課題に役立つ教材を組み立て提供する。さらに、帰国隊員支援では、教育委員会と共同で海外教育経験の還元法について検討(学校の教育研究会等で具体化)を進め、海外教育経験の活用モデルを作ることを目標とする。
     
青年海外協力隊必携としての日本の教育情報の整備と活用 課題名: 青年海外協力隊必携としての日本の教育情報の整備と活用
実施機関: 筑波大学
概要:   現在、国際協力イニシアティブライブラリには、「拠点システム事業」の成果物として、次の成果が収められている。
  ■ 日英「日本の教育制度と教育実践―研修のためのヴィジュアル教材」
  ■ 日英「小学校学習指導要領解説算数編/中学校学習指導要領解説数学編(平成10年版)」
  いずれも、青年海外協力隊員に非常に活用頻度の高い教材であり、1500を超えるアーカイブス内の登録情報において、前者は常時トップクラスのダウンロード頻度があり、後者も常時30位の前後頻度がある。
  他方で、平成18年に教育基本法が改正され、平成19年に学校教育法が改正され、平成20年に学習指導要領が改正され、平成21年4月より、小中学校で教育課程が完全実施された。そこでは、これまでの国際社会における戦後日本の役割を超えた国際社会の要請、知識基盤社会、持続可能な成長、地球規模課題に応えるための、日本の教育の新しい方向性が記されている。また、平成20年度より免許更新制も始まり、教員研修内容も様変わりしている。結果として、利用頻度の高い情報は、今年度より利用し難い情報になることが見込まれる。
  そこで本活動では、今年度、派遣される協力隊員が、これら最新情報を活用できるよう、次の資料を作成し、青年海外協力派遣現職教員等と協力して完成させ、今後隊員が活用できるようにする。
  ■ 日英「日本の教育制度と教育実践―研修のためのヴィジュアル教材(平成21年版)」
  ■ 日英「小学校学習指導要領解説 算数編/中学校学習指導要領解説 数学編(平成21年版)」
     
日系社会青年ボランティア「現職教員特別参加制度」活動支援のための教育協力システムの形成 課題名: 日系社会青年ボランティア「現職教員特別参加制度」活動支援のための教育協力システムの形成
実施機関: 愛知県立大学
概要:   本事業では、JICA日系社会青年ボランティアとして、平成21年度から派遣が開始される現職教員の活動の質の向上、および、帰国後、外国籍児童生徒に対する指導につなげるための経験知の共有・問題解決支援のためのシステム構築を目指す。さらに、日本国内での教育支援活動モデルを形成し、そこでの実践・検証を通して、具体的な教具教材、教室活動案を提案する。
  特に、日本、ブラジル両国間の移動をくりかえす児童生徒が増加し、彼らに対する継続的な教育支援が求められている現状を考慮に入れ、愛知県を中心とした日系ブラジル人集住地区の日系ブラジル人児童生徒への教育支援を行っている教育実践者(公立学校、NPO団体、ブラジル人学校等)と、ブラジルの日系人コミュニティにおける教育実践者(JICA日系社会青年ボランティア等)から教育現場の課題を集約、整理するための教育協力のネットワークの形成を目指す。そして、ネットワークの形成と共に、これを活用した、日系ブラジル人児童生徒の教育現場におけるニーズ探求、教具教材開発、教室活動の実践提案、実践とフィードバックから、更なる開発につなげることを可能にする一連の教育協力システムを構築する。
     

Ⅴ. 知的支援ネットワークの形成

農学知的支援ネットワーク形成による国際教育協力強化・推進のためのモデル構築 課題名: 農学知的支援ネットワーク形成による国際教育協力強化・推進のためのモデル構築
実施機関: 名古屋大学
概要:   昨年度すでに参画を表明している大学や研究機関等を中心に、国際協力機関等の協力を得て、事業体としての農学知的支援ネットワークを正式に立ち上げ、大学支援や科学技術協力予算の獲得に取り組み、ネットワークを活かした活動の具体的事例を示すモデルとする。そのため、まず①これまでに参画の意思表示をしている全国の関係機関から準備委員数名を委嘱し、組織運営体制、運営方法や活動内容などの事前検討を行い、併せて恒常的な活動ができる事務局体制を整備する。②国際教育協力を志向する大学に対する支援事項を整理するとともに、昨年度実施したリソース・ニーズ調査結果を基に、参画大学及び国際協力機構の協力を得て国内外の共同研究に向けた可能性調査を実施し、国内研修を含む科学技術協力プロジェクトの具体案作成に取り組む。また、③大学による科学技術協力の先行事例を集め、大学が戦略的に科学技術協力を実施するため方策を検証し、ネットワーク関係者と共有する。また国内知的援助リソースと途上国の支援ニーズについては昨年度に引き続きインタラクティブWebシステムを使って調査し、データベースを蓄積してその後の活用に備える。このような活動によって、科学技術協力における本ネットワークの事業体としての実用性を示し、新たな参画機関を募り、モデルとしての真価を発揮せんとするものである。
     

Ⅵ. 関連情報の整備・管理

「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点形成事業全体に係る成果品の収集と管理 課題名: 「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点形成事業全体に係る成果品の収集と管理
実施機関: 筑波大学教育開発国際協力研究センター
概要:

「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点形成事業全体に係る成果物の収集と管理、関連資料の収集と管理、広報等の実施という課題に対して本年度は以下のことを行う。

1) 新規課題に対するポータルサイトの登録と更新支援
2) 昨年度課題、過年度終了課題に対する既登録環境と登録支援
3) ビデオデータ等を配信するためのストリーミングサーバの運用
4) アクセス統計機能の拡張により登録コンテンツ間の相互参照を支援
5) サーバのセキュリティ向上
6) 記憶容量拡充によりビデオデータ等大容量データ登録を支援
     
     
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